定期健康診断の有所見率は,心血管危険因子に関する項目を中心に増加の一途をたどっている.高年齢労働者の割合は増加しており,今後も心血管危険因子の重要性が高まる.心血管危険因子は,適度な運動や適切な食生活といった健康的な生活習慣を実践することで予防することが可能である.職域における健康増進についての取り組みとしては,心身両面にわたる健康保持増進のための措置(Total Health promotion Plan: THP)が挙げられる.しかし,THPを行っている事業場はわずか5%で,運動習慣のある者の割合は約3割である.そこで,地域保健との連携による健康増進活動の有効活用,運動を実践しやすい環境改善,運動以外の身体活動の増加の効果検証などといった取り組みを行い,多くの労働者の健康増進につながるような研究が望まれる.また,職域で健康増進活動を展開するためにも,仕事満足感や労働適応能力,休業率などの仕事に関連する因子の評価を行っていくことも肝要となってくる.