抄録
わが国における有害物を取り扱う作業のうち,指定作業場については,定期的に作業環境測定を行い,その結果に基づいて対策を行うこととなっている.これにより,わが国の作業環境は著しく改善したが,作業環境が良好で当該物質が検出限界以下になっても定期測定が必要である一方,有害物を扱っていても指定作業場でなければ作業環境測定の義務がないなど,現行の方法では限界があることも指摘されている.一方,欧米では,作業者の個人ばく露濃度を測定することにより作業環境管理と作業管理が行われている.わが国でも,現在,個人ばく露濃度測定を取り入れることを検討しているが,欧米の方法をそのままわが国に導入するには多くの課題がある.本稿では,これまでのわが国の作業環境管理の歴史と現状,さらに今後の課題について概説する.