Journal of UOEH
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[総説]
脂肪芽細胞:形態学的特徴と診断学的価値
久岡 正典
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2014 年 36 巻 2 号 p. 115-121

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抄録

脂肪芽細胞は概念的に脂肪細胞の前駆的細胞ないし未成熟な細胞であり,組織学的には脂質を含んだ単ないし多空胞状の細胞質と陥凹し,しばしば帆立貝様の濃染性核を持つことを特徴とする.主として腫瘍性疾患において見られるが,前脂肪細胞のように正常脂肪組織の分化過程をある程度再現する細胞とみなされている.伝統的にその存在は特に脂肪肉腫の診断において強調されてきたが,Lochkern細胞や褐色脂肪,偽脂肪芽細胞などの組織学的に脂肪芽細胞と類似した細胞も存在することから,病理医にとっては脂肪芽細胞の同定は必ずしも容易でない.また,脂肪芽細胞は脂肪肉腫の適切な診断のために依然として重要ではあるが,脂肪芽腫や軟骨様脂肪腫,紡錘細胞・多形脂肪腫といった良性脂肪性腫瘍にも認められることがあるなどの理由で,今日の脂肪肉腫の診断における必須の条件とはなっていない.本総説では,日常の病理診断を容易にすると共に誤診の回避にも役立つように,脂肪芽細胞や脂肪芽細胞の見られる良性腫瘍および脂肪芽細胞類似細胞の臨床病理学的特徴を要約する.

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© 2014 産業医科大学
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