2014 年 36 巻 2 号 p. 141-146
関節リウマチ(RA)は関節炎と関節の構造的障害を特徴とする疾患で,進行すると身体機能障害を引き起こし,就労率の低下や介護といった社会資源の損失をもたらす.元来RAは進行性の疾患と考えられていたが,近年の治療の進歩により関節破壊の完全な進展抑制が現実的となった.しかし,罹病期間が長く新治療の恩恵を受けられなかった,または新治療によっても疾患活動性が制御できないなどの理由で進行した関節破壊を呈する患者は稀でなく,破壊関節を再生しうる治療法の開発が待たれている.我々は,骨・軟骨に分化可能で抗炎症作用を持つ間葉系幹細胞(MSC)による治療をRAの新規治療法として位置づけ,これまでにMSCが破骨細胞分化抑制作用を持つこと,炎症がMSCの骨芽細胞分化を促進し,軟骨細胞分化を抑制することを報告した.さらに現在,足場によるMSC移植システムを構築中であり,RA患者への臨床応用は着実に近づきつつあると考えられる.