Journal of UOEH
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[症例報告]
甲状腺腫瘍(Plummer病)で心不全を繰り返した無表情型甲状腺機能亢進症の1例
成澤 学岡田 洋右新生 忠司久能 芙美田中 良哉
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2014 年 36 巻 4 号 p. 277-283

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抄録

今回繰り返す心不全病態が,緩徐に増大して機能性を伴った甲状腺腫瘍(Plummer病)による甲状腺機能亢進症を隠蔽していた無表情型甲状腺機能亢進症の1例を経験したので報告する.症例は81歳女性.心不全で入院時,甲状腺機能亢進を認めて当科紹介.76歳で慢性心房細動による心不全発症.翌年free thyroxine 4 (FT4) 3.30 ng/dlと高値であったが症状なく,抗甲状腺自己抗体陰性,エコーでは左葉下極に内部血流の乏しい32 mmの腫瘍を認めたが自然にFT4 2.60 ng/dlと軽快し一過性甲状腺炎として経過観察となる.しかし4年間で腫瘍は41 mmへ増大し,甲状腺シンチグラフィーでPlummer病と診断.心不全の増悪因子であり抗甲状腺薬で治療開始し,FT4 低下,心不全頻度も減少した.緩徐な腺腫増大でPlummer病を発症し,高齢,心房細動,繰り返す心不全が甲状腺機能亢進の病態を隠蔽する稀な1例であった.高齢者に心不全や心房細動を認める際は甲状腺機能亢進症を常に鑑別する必要がある.

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© 2014 産業医科大学
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