抄録
大腸がん生存者である被雇用者の職場復帰は労働衛生上の困難な課題である.本研究は大腸がん生存者の職場復帰の過程で生じる種々の阻害要因と促進要因を保健医療従事者の認知から探ることを目的とした.多様な分野の保健医療従事者(政府および民間部門)12名を対象に半構造化面接による聞き取り調査を実施した.得られた情報は逐語的に筆記し,情報処理をNVivo software 8.0.により行った.オープン・コーディング,軸足コーディングおよび選択的コーディングにより文脈情報から仮説を生成した.保健医療従事者は,職場復帰について,4つのカテゴリーに分けられる阻害要因と促進要因を数多く共有していた.主要な阻害要因は,副作用と心理的阻害要因(個人的要因),補償(経済的要因),さまざまな仕事に従事することの困難さ(労働関連要因),長期病気休職制度,雇用者の消極的な姿勢,知識と意識の欠如(環境要因)である.確認された主要な促進要因は,就労生活の再開意欲,社会への貢献意欲(個人的要因),健康保険の財源を維持するための経済的圧力(経済的要因),仕事上の要求水準の軽減(労働要因),支援的職場,病気離職に対する厳格な職場の方針(環境要因)である.保健医療従事者は必ずしも職場復帰について訓練されてはいなかったが,職場復帰ががん生存者と職場にとって重要であることはすべての保健医療従事者が認めた.がん生存者の職場復帰の援助において,産業医には直接的な役割がある.がん生存者の職場復帰への早期の取り組みには,闘病後の職場復帰を改善するために調整可能な要因(労働関連要因および環境要因)に照準を合わせ,産業医と雇用者を加えることが重要である.