2015 年 37 巻 4 号 p. 255-261
1-ブロモプロパン(1-BP)は洗浄やスプレー接着剤の溶剤として用いられている.1-BPの有害性はヒトの事例や成獣を用いた動物で報告されてきた.発達毒性も報告されてはいるが,発達神経毒性についての詳細はわかっていない.我々は,1-BPの胎生期曝露が,発達期ラットへのカイニン酸投与により誘導される行動,すなわちscratching行動やwet dog shake様行動に及ぼす影響を調べた.ウィスター系妊娠ラットの妊娠1日目から20日目まで(6時間/日),濃度700 ppmの1-BP蒸気を曝露した.生後14日目の対照群と1-BP曝露群にカイニン酸を0.1,0.5,2.0 mg/kgで腹腔内投与した.Scratching行動に関しては対照群と1-BP曝露群に違いは見られなかったが,wet dog shake 様行動に関しては,低濃度である0.1 mg/kgにおいて発生率の低下が1-BP曝露群で見られた.1-BP胎生期曝露が発達期の神経行動に影響することが示唆された.