Journal of UOEH
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腱板断裂患者における喫煙状況と肺機能
吉井 千春 内田 宗志野口 真吾鳥井 亮島袋 活子矢寺 和博
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2016 年 38 巻 3 号 p. 243-249

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抄録

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)は喫煙者の数人に1人が罹患する疾患であるが,推計患者数に比較して極めて少ない患者しか診断されていないことが問題になっている.一方,腱板断裂の発症に喫煙が関連する報告が散見されるようになった.今回我々は腱板断裂患者における喫煙状況を調査し,さらに肺機能検査より未診断のCOPD患者の把握の可能性について検討した.対象は2011年4月から2015年6月まで当院整形外科にて腱板断裂と診断され,術前肺機能検査が行われた40歳以上の連続症例150名.性別は男性が96名,女性は54名,喫煙状況は非喫煙者が59名(39.3%),前喫煙者が62名(41.3%),喫煙者は29名(19.3%)で,喫煙率は日本人全体とほぼ同様であったが,喫煙歴のある患者では1日喫煙本数21本以上が31.9%と,日本人全体の21本以上(男性15.2%,女性5.5%)に比較して多かった.気流閉塞は150名中25名(16.7%)に認め,内訳はCOPD 7名,気管支喘息3名,気管支拡張症1名,未診断14名であった.未診断の気流閉塞は,非喫煙者が7名,前喫煙者が5名,喫煙者が2名で,COPDの病期分類Ⅰ期相当が11名, Ⅱ期相当が3名で,Ⅲ期以上はいなかった.また年代別の気流閉塞は,40代(0%),50代(8.3%),60代(20.7%),70代以上(25.6%)と,年齢が高くなるほど増加した.今回の結果から,腱板断裂患者においては,喫煙歴の有無のみならず,喫煙本数にも留意する必要性を認識できた.また術前肺機能検査のデータを共有することにより,COPDの早期発見の可能性が示唆された.

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© 2016 産業医科大学
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