Journal of UOEH
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慢性中耳炎患者の術後再穿孔鼓膜に対する薄切軟骨を用いた再鼓膜形成術
鈴木 秀明 小泉 弘樹北村 拓朗田畑 貴久喜瀬 祥啓橋田 光一
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2016 年 38 巻 3 号 p. 237-242

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抄録

鼓膜形成術は耳科手術の基本的手技の1つであり,聴力改善のための重要な術式である.移植片には一般的に側頭筋膜が用いられるが,10~20%の症例で再穿孔が起こり,一度再穿孔を来した例では再度手術を行っても穿孔を繰り返す場合が多い.今回われわれは術後鼓膜再穿孔を来した慢性中耳炎患者7例8耳(男性3例,女性4例,13~80歳(平均53.9歳))に対する修正手術として,軟骨を移植片とする鼓膜形成術を行った.軟骨は耳珠から採取し,片面に軟骨膜を付けたまま0.3 mm厚に薄切した.大きさ・形状をトリミングした後,軟骨膜の付着面を外側にして鼓膜穿孔部にアンダーレイし,フィブリン糊で接着・固定した.前回手術の術式は,鼓室形成術Wullstein Ⅰ型が5耳,接着法による鼓膜形成術が3耳であり,移植片は7耳で側頭筋膜,1耳で皮下組織であった.術後経過観察は16~44ヶ月(平均30.0ヶ月)で,穿孔閉鎖率は87.5%であった.最終聴力成績は,術後聴力レベル≦30 dB,聴力利得≧15 dB,術後気骨導差≦15 dBのいずれかに該当するもの(日本耳科学会の基準に基づく聴力成績の成功例)は5耳(62.5%)であった.以上より軟骨は,術後再穿孔耳に対する鼓膜形成術に用いる移植片として,安定で優れた素材であると考えられた.

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