Journal of UOEH
Online ISSN : 2187-2864
Print ISSN : 0387-821X
ISSN-L : 0387-821X
関節リウマチを合併し,びまん性汎細気管支炎類似の病像を呈した成人T細胞性白血病の1剖検例
白石 朝子石本 裕士赤田 憲太朗川波 敏則矢寺 和博迎 寛
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 39 巻 1 号 p. 55-61

詳細
抄録

症例は慢性副鼻腔炎と関節リウマチの既往がある50歳女性.緑膿菌による下気道感染症を繰り返し当科を受診した.胸部CTではびまん性汎細気管支炎様の肺病変が認められ,血清human T-lymphotrophic virus type 1(HTLV-1)抗体が陽性であった.関節リウマチに対しては生物学的製剤使用後であり,消炎鎮痛剤の内服のみで疾患制御は良好であった.肺病変に対してマクロライド少量長期療法を4年間施行したが,徐々に喀痰培養から検出される緑膿菌は多剤耐性化が進行し,下気道感染症は制御困難となり,さらにadult T cell leukemia(ATL)急性型を発症した.併存する耐性緑膿菌による下気道感染症が制御困難となり呼吸不全を伴うようになったためATLに対する積極的な全身化学療法は施行できず死亡した.剖検所見では,肺を含む多臓器に異型リンパ球の浸潤が認められ,HTLV-1感染によるATLの進行が本症例の病勢に大きく関与していた.びまん性汎細気管支炎類似の臨床背景を呈した関節リウマチとHTLV-1感染を合併した症例は検索範囲内ではなく,これらは類似した臨床像や画像所見を示すため,病態の鑑別が困難である.また,現在,肺病変合併症例に対するATLの全身化学療法の治療時期についての明確な基準はなく,今後の検討を要する.

著者関連情報
© 2017 産業医科大学
前の記事 次の記事
feedback
Top