Journal of UOEH
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[総説]
工業用ナノマテリアルの製造と取扱いで用いられる個別のリスク低減対策の効果:システマティックレビュー
明星 敏彦 永田 智久ジョス バビーク
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2017 年 39 巻 3 号 p. 187-199

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抄録
多くの工業用ナノマテリアルが産業製品の基本材料として開発され使用されており,それらは開発国だけでなく開発途上国の労働者への健康リスクを持つ可能性がある.工業用ナノマテリアルの曝露低減対策の効果を証明する研究はほとんどないので,我々は2000年から2015年までに公表され特定された工業用ナノマテリアルのリスク低減対策の研究をシステマティックに調査した.ここでは,状況に曝露低減対策を入れた場合と入れない場合を比較し,工業用ナノマテリアルの曝露を測定した研究を採用した.これらの対策の効果を判定するために,我々は工業用ナノマテリアルの低減対策の効果の尺度として防護係数,対策の有無による有害物濃度の比として定義される文献を使用した.ここではPubMedの1,131レコードや他の文献リストから,41の文献を条件に合致したものとして抽出した.そして局所排気装置,密閉化,プロセス自動化などの工学的対策や,個人用保護具に分類した.密閉化の対策では,防護係数が100を超える場合があった.他の工学的対策では,よい結果では防護係数は10から20であったが,多くの局所排気装置では10以下,時に状況を悪くする場合もあった.N95や同等のグレードの使い捨て式防じんマスクはナノサイズの試験エアロゾルに対して10程度の防護係数を持っていた.工学的対策は工業用ナノマテリアルへの曝露を低減するが,密閉化のシステムの方がより効果的であることに弱い証拠があると結論付けた.呼吸用保護具は現場での研究が少ないため弱い証拠があると判定した.工業用ナノマテリアルが職業曝露限界を超える場合,または,その毒性情報がない場合に対策を決定するため上記の情報を使うことができる.
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© 2017 産業医科大学
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