症例は54歳女性.43歳より両手指腫脹,49歳より足底の肥大,顔貌変化,滑舌不良を自覚し先端巨大症の精査目的にて入院となる.眉弓部膨隆,下顎突出,鼻翼と口唇の肥大,手足の容積増大,巨大舌の所見があり.growth hormone (GH) 39.8 ng/m
l,insulin like growth factor-1 (IGF-1) 717 ng/m
l,75 g oral glucose tolerance test (OGTT)でGH 22.9 ng/m
lと抑制なし.X線検査で手指末節骨の花キャベツ様肥大変形,足底部軟部組織厚増大,トルコ鞍前後径拡大を認め,magnetic resonance imaging (MRI)で鞍上部の右側へ進展し海綿静脈洞浸潤を伴う21×17 mmの腫瘤を認めた.これらの所見からGH分泌過剰,IGF-1高値,75 g OGTTでGH抑制がなく,下垂体腫瘍を認め先端巨大症と診断した.腫瘍縮小効果を期待しオクトレオチドlong acting release (Oct-LAR) 20 mg/4wの投与を開始した.3回投与後GH 2.19 ng/m
l (75 g OGTTのGH 1.69 ng/m
l),IGF-1 370 ng/m
lへ低下し,IGF-1 205 ng/m
lと治癒基準を満たした.今回Oct-LAR投与により,GHおよびIGF-1低下に加え,腫瘍縮小および海綿静脈洞浸潤の消失を認め,安全に手術可能な状態となり内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍摘出術を行い,術後合併症もなく経過した症例を経験した.先端巨大症の治療は手術療法が第一選択だが,Oct-LARの術前投与を行うことで治癒切除可能となり,先端巨大症の治療成績が改善する可能性がある.
抄録全体を表示