Journal of UOEH
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高アンモニア血症を伴った感染性腸炎の1例
尾辻 健 清水 智子遠藤 武尊金澤 綾子荒井 秀明長田 圭司原山 信也二瓶 俊一相原 啓二齋藤 光正蒲地 正幸
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2017 年 39 巻 4 号 p. 271-276

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抄録

ウレアーゼ産生菌のため高アンモニア血症を来した報告は散見されるが,その多くは尿路感染症である.今回我々はウレアーゼ産生菌による感染性腸炎のため高アンモニア血症を来したと考えられた症例を経験した.症例は70歳代女性.近医で顕微鏡的多発血管炎と診断され当院へ紹介となった.ステロイド療法およびリツキシマブを開始して顕微鏡的多発血管炎は比較的落ち着いていたが,頻回の下痢および高アンモニア血症(324 µg/dl)を認め,昏睡状態となった.感染性腸炎および高アンモニア血症に対して,抗菌薬による加療およびアンモニアの解毒療法を開始したところ,血中アンモニアは47 µg/dlまで低下し意識は清明となった.高アンモニア血症の原因としては,肝機能障害や門脈体循環シャント,蛋白質過剰摂取,便秘は認めず,薬剤性の高アンモニア血症も否定的であり,ウレアーゼ産生菌によるアンモニア過剰産生が疑われた.本症例で提出した培養結果からはウレアーゼ産生能をもつ原因菌は特定できなかったが,培養で同定することが出来なかったウレアーゼ産生菌が,高アンモニア血症を引き起こしていた可能性が高いと考えられた.尿路感染症だけでなく,感染性腸炎においても,高アンモニア血症の原因としてウレアーゼ産生菌による影響を考慮する必要がある.

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© 2017 産業医科大学
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