Journal of UOEH
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2型糖尿病と血管内皮機能障害
鳥本 桂一 岡田 洋右田中 良哉
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2018 年 40 巻 1 号 p. 65-75

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抄録

生体の恒常性を維持するために血管内皮機能は重要であり,特に血管内皮細胞で産生されるnitric oxide (NO) は,血管の緊張を制御し,抗動脈硬化作用を担う.2型糖尿病は血管内皮機能障害をきたす代表的な疾患であり,全身のさまざまな血管障害をきたし,全身の臓器が障害される.2型糖尿病に合併する動脈硬化性疾患は血管内皮機能障害からはじまる慢性炎症性病態であり,動脈硬化病変の初期変化として,血管内皮機能障害は重要である.2型糖尿病における血管内皮機能障害は,高血糖やインスリン抵抗性に伴う高インスリン血症,低血糖が要因と考えられており,特に食後高血糖や血糖変動に伴う酸化ストレスの上昇が関与している.また,食後の糖・脂質代謝異常により血管内皮機能障害は引き起こされるため,食後代謝異常の是正も重要である.一方で,glucagon-like peptide-1 (GLP-1) 受容体作動薬,チアゾリジン誘導体やビグアナイド薬,dipeptidyl peptidase-4 (DPP-4) 阻害薬などの糖尿病治療薬には,血糖コントロールに依存しない血管内皮機能保護効果が報告されている.糖尿病患者の健康寿命促進に貢献するためには,単にHbA1cを低下させるだけではなく,食後高血糖や血糖変動,低血糖を避け,病態を考慮し,抗動脈硬化を有する薬剤の選択など,血管合併症抑制を見据えた治療を行うことが重要である.

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© 2018 産業医科大学
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