Journal of UOEH
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急性虚血性脳卒中と急性大動脈解離の鑑別診断におけるフィブリノゲン/フィブリン分解産物の有用性
二瓶 俊一 荒井 秀明内田 貴之金澤 綾子遠藤 武尊尾辻 健原山 信也相原 啓二蒲地 正幸
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2018 年 40 巻 2 号 p. 139-145

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抄録
急性虚血性脳卒中の症状を有する急性大動脈解離症例に組織プラスミノーゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator)を使用し,死亡に至った事例が報告されている.それゆえ急性大動脈解離と急性虚血性脳卒中の鑑別が重要である.本研究ではフィブリノゲン/フィブリン分解産物(FDP)値が急性大動脈解離と急性虚血性脳卒中の鑑別に有用であるかを調査した.研究対象者は,2007年から2012年に当院へ搬送された,20名の急性大動脈解離症例(男性10名,女性10名,平均年齢63.9±13.6歳)および159名の急性虚血性脳卒中症例(男性91名,女性68名,平均年齢74.2±10.6歳)であった.さらに大動脈解離症例を偽腔開存型急性大動脈解離群と血栓閉塞型大動脈解離群に分類した.FDP値は急性虚血性脳卒中群と比較し急性大動脈解離群で有意に高くなっていた(18.15[5.2–249.9]μg/ml vs. 2.3[1.5–4.45]μg/mlP<0.001).急性大動脈解離症例において,血栓閉塞型大動脈解離群(n=11)と比較して,偽腔開存型大動脈解離群(n=9)で有意にFDP値が高くなっていた(293.2 μg/ml[63.1–419.6 μg/ml]vs. 5.6 μg/ml[3.8–7.9 μg/ml].結論として,急性虚血性脳卒中群と比較し急性大動脈解離群,特に急性虚血性脳卒中と比較し,偽腔開存型大動脈解離群でFDP値が有意に高くなっている.FDP値の上昇は急性虚血性脳卒中と偽腔開存型急性大動脈解離の鑑別に有用なマーカーとなる可能性がある.
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© 2018 産業医科大学
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