Journal of UOEH
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英国の危機管理システムと労働安全衛生機能の位置づけ
高橋 哲雄久保 達彦森 晃爾
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2018 年 40 巻 2 号 p. 201-208

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抄録

日本の危機管理システムにおいて労働安全衛生機能の位置づけを明確化していくためには,複数の先進国のシステムを参考とすることが有効と考えた.すでに調査を行った米国に加え,今回は安全衛生に関して規制と科学的な検討の両方を行う安全衛生庁Health and Safety Executive(HSE)が存在する英国の調査を行った.インターネットや文献上で得られる情報を整理したうえで,HSE本部と原子力規制局Office for Nuclear Regulation(ONR)を訪問し,インタビュー調査を実施した.英国では危機管理体制を計画と実対応の両面から規定する法律として国家偶発事象法Civil Contingencies Act 2004(CCA2004)に基づき,危機の種類に関わらず,地方から国レベルの危機管理計画の立案と危機対応のための一貫した枠組みを確立しており,HSEは安全衛生の専門家として助言を行っていた.また,HSEやONRは化学物質や放射性物質が関わる重大事故の緊急時計画立案に対しても支援を行っていた.米国および英国の危機管理システムでは,危機対応者の安全と健康を確保するために,3つの共通点,1)災害の種類を問わず,危機に対する共通の危機対応体制が採用されている,2)国内の市区町村レベルから国レベルまで,危機時の労働者の安全衛生を担う機関や組織が存在している,3)危機時に安全衛生機能を担う人材が確保されているが,確認された.日本の危機管理システムの改善において今後参考にすべきと思われる.

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