Journal of UOEH
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炎症性乳癌とTrousseau症候群をきたし治療に難渋したLuminal A男性乳癌の1例
田嶋 裕子草薙 佳澄武田 祐介吉松 克真石田 輝明篠原 伸二平井 文子今西 直子市来 嘉伸田中 文啓
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2019 年 41 巻 2 号 p. 211-216

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抄録

症例は67才男性.7年程前から左乳房腫瘤を自覚していたが放置.4ヶ月程前から左前胸壁全体に小腫瘤が多発したため最初に皮膚科を受診.皮膚生検で乳癌の皮膚転移と診断され当科への紹介となった.Estrogen receptor(ER)陽性,progesterone receptor(PgR)陽性,human epidermal growth factor recepter 2(HER2)陰性,Ki67は10-15%であり,サブタイプはluminal Aであった.2次性の炎症性乳癌をきたしており化学療法を先行.また下肢静脈に血栓の充満を認めたため抗凝固剤(エドキサバン)を開始.悪性腫瘍による血液凝固亢進状態(Trousseau症候群)をきたしているためCVポートは造設せず,3週ごとのドセタキセル投与を3コース施行したが病状は増悪し,新たに右腸骨動脈の閉塞を認めたため,抗凝固剤をシロスタゾールとリバーロキサバンに変更したが,血栓改善なくさらに末梢循環不全のため左手第2指が壊死をきたし,その後第3指,4指の血流不全,第4指の壊死もきたした.FEC(5-FU,エピルビシン,シクロフォスファミド)療法を導入し4コース施行したところで病状はstable diseaseになったが血管確保が困難になり,化学療法をテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(S-1)内服に変更し胸壁に対して強度変調放射線治療intensity modulated radiation therapy(IMRT) を施行した(IMRT中S-1は中止).腫瘍の縮小効果は認めたが,次第に全身状態が悪化し治療開始後1年3ヶ月後に永眠された.今回血栓傾向をきたし治療に難渋した炎症性luminal A男性乳癌の1例を経験したので報告する.進行癌患者の血栓傾向はしばしば報告されるが,男性乳癌患者は腫瘤を自覚してもすぐに来院せず,進行する傾向があるため,男性乳癌の啓蒙を行う必要がある.

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© 2019 産業医科大学
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