抄録
症例は12歳女児.−5 SD以下の著明な低身長のため当科を紹介受診した.6歳頃から急に成長率低下が認められていたが,その他の症状がなかったため検査を受けていなかった.頭部MRIでは鞍上部腫瘍を認め,内分泌学的検査で腫瘍による複合型下垂体機能低下症と診断した.術前からヒドロコルチゾンとレボチロキシンの補充を開始し,後日,頭蓋内腫瘍摘出術を施行した.病理検査で鞍上部黄色肉芽腫と診断された.本症例は急激な成長率低下を認め,脳腫瘍によるGH分泌不全を含む下垂体機能低下症による成長障害を示唆する典型的な成長曲線を示していた.小児では成長障害が脳腫瘍の唯一の症状となりうるため,脳腫瘍の早期診断,治療のため成長障害という症状にも注目することが重要である.学校検診での成長曲線の活用が重要と考えらえた.