2019 年 41 巻 3 号 p. 335-342
頭蓋骨悪性リンパ腫は稀な腫瘍であり,初期診断に苦慮することがある.我々は,2症例の頭蓋骨悪性リンパ腫を経験したため報告する.最初の症例は72歳の女性であり,頭部外傷後に頭頂部の大きな腫瘍を指摘された.次の症例は63歳の男性であり,視力障害と後頭部痛に伴う後頭部皮下腫瘍を指摘された.2症例目では,悪性腫瘍の診断は症状と骨破壊の状態から容易であった.しかしながら,最初の症例においては,症状を認めず,頭部CTにおける骨破壊もわずかであったため診断が困難であった.病理診断では,両方の症例は頭蓋骨に発症したびまん性B細胞性リンパ腫であった.我々は,23症例の異なる頭蓋骨腫瘍について初期症状,骨破壊像を調査した.これらの症例との比較により,頭蓋骨リンパ腫の特徴は頭蓋骨に大きな腫瘍を認めること,不完全な骨破壊像を伴っていることと考えられた.この特徴は腫瘍による頭蓋骨の破壊が皮下腫瘍と比べゆっくりであるためと考えられた.この特徴は,良性,悪性の頭蓋骨腫瘍と比較しても特異的であり,頭蓋骨リンパ腫は骨条件CTにて確定診断し得ると考えられた.