1984 年 6 巻 3 号 p. 265-271
現在の医学教育でhumanizationや人間尊重が1つの問題として指摘されてきてはいるが, 時として, 立て前論的, 抽象概念的な形で止まっている. しかし, 臨床心理学, 人間性心理学の分野では, 人間尊重の具体的属性として他者への関心の水準, 共感的理解, 無条件的肯定的関心, 自己一致や自己への気づきなどの要因が明確になっている. そこで本研究では, この人間尊重を促進する方法として, 心理治療の基本であるactive listeningや自己理解促進の為のfocusingの学習のため, 医学部学生11名を対象として, 体験学習プログラムを形成し, その効果を関係認知スケールで測定した. その結果, 共感的理解と無条件的肯定的関心が高じ(P < 0.02), 各属性間の相関関数も全体的に高まることが明確になった. 本研究では, これらの結果の考察とともに, 医学教育におけるこうした方法の意義と問題点をも合わせて考察した.