Journal of UOEH
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6 巻, 3 号
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  • 近藤 正樹, 北沢 右三
    原稿種別: 原著
    1984 年6 巻3 号 p. 221-234
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    産業医科大学構内と付近の自然林で1982年10月と11月に蜂蜜などを用いたベイト・トラップを設置して誘引されたアリの種類と数を調査した. ミミズバイ・スダジイ群集(自然林)と萌芽林を含む二次林にはキイロシリアゲアリ, アメイロアリが高常在度, 高相対被度で, オオハリアリ, ヤマアシナガアリ, ウロコアリ, ヤマトウロコアリ, コツノアリが高常在度で生息し, 放棄された草地にはアメイロアリ, トビイロシワアリ, キイロシリアゲアリ, トビイロケアリ, ルリアリが中低常在度で見つかった. 造成地の芝生は平面・斜面ともアリ群集は貧弱でトビイロシワアリ, クロヤマアリ, オオズアカアリが低常在度で見つかっている. 運動場の芝生では全くアリが見つかっていない. 植込があると, 植木と共に移入されたアリが組みこまれることが目立った特徴である. これらは林縁性のアリと草地・芝地性のアリの組み合わせのアリ群集といえる.
  • 大久保 享一, Carolyn Curtis HUNTENBURG, 大久保 慶二, 栗本 晋二, 横山 三男
    原稿種別: 原著
    1984 年6 巻3 号 p. 235-242
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ヒト末梢血Tリンパ球 (human peripheral T lymphocyte; HTL) は, ヒツジ赤血球(sheep red blood cell;SRBC)とrosetteを形成することが知られている. 我々は, HTLを種々のレクチンで刺激した場合のHTLとSRBCとのrosette形成について研究を行った. 実験に用いたレクチンは14種類で, rosette assayは, active T rosette formation (activeTRF) で行った. その結果, 使用した14種類のレクチンのうち, activeTRFの形成率が上昇したものは, PHA, LCH, WGAおよびRCAIの4種類のみであり, これらの形成率の上昇は, HTLを各レクチンで刺激した後1時間以内に観察され, また, 形成率の上昇は, レクチンの濃度によっても影響された. また, activeTRFの形成率の上昇作用は, 従来言われていたmitogenic lectinのみでなく, non-mitogenic lectinでも認められることが判明し, レクチンの糖特異性とも特に密接な関係がないことが判明した.
  • 大久保 享一, Carolyn Curtis HUNTENBURG, 大久保 慶二, 栗本 晋二, 横山 三男
    原稿種別: 原著
    1984 年6 巻3 号 p. 243-248
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ヒト末梢血Tリンパ球とヒツジ赤血球とのactive T rosette formation (activeTRF) に与える代謝阻害物質の影響について検討した. また, cytochalasin B (CB) とレクチンとを同時にリンパ球に作用させた時のactive TRFの変化について検討した. その結果細胞内微細線維の運動阻害剤であるCBのみがactive TRFの形成率を著明に減少させ, 細胞内蛋白合成阻害剤であるmitomycin Cなどは形成率に影響を与えなかった. また, CBはLCHおよびRCAIによるactive TRFの形成率増加効果を著明に抑制したが, PHAおよびWGAによるactive TRFの形成率増加効果には大きな影響を及ぼさなかった. 以上の結果から, active TRFの現象は, 細胞内蛋白合成とは直接関係はなく, リンパ球細胞膜の現象であり細胞内微細線維によって影響を受けていることが推測された. また, LCHおよびRCAIによるactive TRFの増加の機構と, PHAおよびWGAによるactive TRFの増加機構とが異なることが推測された.
  • 千堂 年昭, 野田 敦子, 野田 浩司, 許 光陽, 山本 雄三
    原稿種別: 原著
    1984 年6 巻3 号 p. 249-255
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    イソニアジド(INH)は代謝過程において加水分解酵素のINHアミダーゼによって, イソニコチン酸とヒドラジン(Hz)に加水分解されると考えられる. しかし本酵素に関する報告はまだないので, 今回ラット肝を用いてその性質を調べた. 酵素活性は, 基質INHから生成するHzをGC-MS法で分析し, その定量値より算出した. その結果, この酵素はラット肝の主としてミクロゾームならびにライソゾーム画分に高濃度に存在し, 至適pHは, 7.4-7.8であることがわかった. 本酵素はプロ力インならびにビス(p-ニトロフェニル)フォスフェート(BNPP)により阻害を受けるが, アセトアニリドでは影響されず, さらにINHの主代謝物であるアセチルINHにより容易に阻害された. 一方, 酸化酵素誘導剤であるフエノバルビタール, 3-メチルコラントレンならびにリファンピシンでラットを前処理しINHアミダーゼへの影響をみたところ, 酸化酵素だけでなく本酵素も顕著に誘導される興味ある新知見が得られた.
  • 後藤 智恵, 染谷 孝, 茅原 四郎, 水口 康雄, 福長 将仁
    原稿種別: 原著
    1984 年6 巻3 号 p. 257-263
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    アクリジン化合物の変異原性と化学構造の関係について細菌と酵母を用いて検討した. 用いた15種の誘導体のうち, ほとんどの化合物がサルモネラ菌にフレームシフトタイプの変異を起こした. 特に9位にアミン基を持つ化合物は活性が高く, 10位のメチル基は活性を強める作用を示した. 一方酵母ミトコンドリアに対する変異活性の誘起には, 3位, 6位のアミノ基, 10位のメチル基が必要であり, 細菌の場合と異なった結果が示された. また簡便法として行われるスポット法では変異活性を検出できない場合もあることが明らかになった.
  • ―共感能力と他者への尊重能力の促進方法とその効果―
    池見 陽, 増井 武士
    原稿種別: 原著
    1984 年6 巻3 号 p. 265-271
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    現在の医学教育でhumanizationや人間尊重が1つの問題として指摘されてきてはいるが, 時として, 立て前論的, 抽象概念的な形で止まっている. しかし, 臨床心理学, 人間性心理学の分野では, 人間尊重の具体的属性として他者への関心の水準, 共感的理解, 無条件的肯定的関心, 自己一致や自己への気づきなどの要因が明確になっている. そこで本研究では, この人間尊重を促進する方法として, 心理治療の基本であるactive listeningや自己理解促進の為のfocusingの学習のため, 医学部学生11名を対象として, 体験学習プログラムを形成し, その効果を関係認知スケールで測定した. その結果, 共感的理解と無条件的肯定的関心が高じ(P < 0.02), 各属性間の相関関数も全体的に高まることが明確になった. 本研究では, これらの結果の考察とともに, 医学教育におけるこうした方法の意義と問題点をも合わせて考察した.
  • ―その年齢・職務比較―
    神代 雅晴, 長江 寿江子
    原稿種別: 原著
    1984 年6 巻3 号 p. 273-281
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    某大規模電機メーカーの男子従業員1,376名を対象として, 疲労自覚症状調査ならびに従業員意識調査を行い, 年齢, 職種, 職階ごとにおける疲労感の特徴的症状, さらには勤労者の生きがい, 達成感, 単調感等を指標とした職務に対する負担意識の差違について比較検討した. 結果として, 疲労自覚症状は壮年および中高年齢勤労者に比べて若年勤労者に高い有訴率を示す傾向が観察され, さらに,中年齢勤労者に関しては非管理職者に高有訴率の傾向がうかがわれた. 一方, 疲労感の発現は職務に対する面白さ, 達成感あるいは職場の人間関係に起因する感情, すなわち, 負担意識の度合が大きく影響することが示唆された. 同時に, 労働様態の差違が身体的な側面を表現する疲労感の発現に寄与していることが示唆された.
  • 中野 正博, 牧 孝
    原稿種別: 原著
    1984 年6 巻3 号 p. 283-297
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    5828Niから,12050Snまでの約百個の原子核の励起のエネルギーレベルを, パウリ原理とHY相互作用を取り込んだフォノン模型の与える描像をもとに, 2フォノン, 3フォノンのエネルギー領域について, 検討する. 2フォノン領域では, パウリ原理の与えるスピンの順に反し, 2+が低く, 4+が高く出ている事, 3フォノン領域でも, パウリ原理で高く予想されるスピン状態2+, 3+あるいは0+が, 低く出ている事, また, エネルギーが全体的に低く, レベルの密度も高いというフォノン模型の問題点が指摘される. これ等の問題は, BCS近似の悪さ, 非集団的状態の結合, 同じフォノンの積み重ねの悪さ等に起因している可能性が指摘される. これ等の問題を解決できる定式化の考え方が示される.
  • 浜之上 正史, 大久保 享一, 坂本 博士, 武田 師利, 栗本 晋二
    原稿種別: 症例報告
    1984 年6 巻3 号 p. 299-302
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    角膜混濁と白内障のため視力障害をきたした4症例に対して, 角膜移植術と水晶体嚢外摘出術との同時手術を行った. 1) 4症例とも術前に比し視力の向上を得た. 2) 嚢外摘出術も手術顕微鏡下にopen sky法とA/I tipを用いることにより容易にかつ確実に行うことができた. 3) ペンタリングと角膜制御糸を用いることにより, 術中術後の合併症を予防できた. 4) 症例によっては, 角膜移植術と嚢外摘出術との同時手術も積極的に取り組むべきであると考えた.
  • 大塚 正博, 大久保 享一, 坂本 博士, 魚住 博彦, 栗本 晋二
    原稿種別: 症例報告
    1984 年6 巻3 号 p. 303-306
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    先天性鼻涙管閉塞が原因と考えられる慢性涙嚢炎に対してブジー療法を行い, 良好な結果をうることができた一例をここに報告した. 症例は7才男子で, 年長児における慢性涙嚢炎は, 一般的にブジー療法の適応外といわれているが, 本症例のように現病歴などにより先天性鼻涙管閉塞が原因として疑われた場合は, 早期に涙嚢洗浄や涙嚢造影などを積極的に行い, 涙嚢鼻腔吻合術の適応と考えられる症例に対しても術前に閉塞部位の確認のためにも慎重にブジーを行うべきである.
  • 川原 英之, 小田桐 重遠, 藤田 博正, 長野 忠, 村上 基博
    原稿種別: 総説
    1984 年6 巻3 号 p. 307-315
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    近年, 悪性腫瘍に対する治療法の一つとして温熱療法が単独, あるいは放射線や化学療法との併用により, 臨床応用されるようになって来た. in vitroおよびin vivoの基礎的研究によれば, 1) 悪性腫瘍細胞は正常細胞に比べ加温に対しより感受性があり, 2) 放射線や種々の化学療法に加温を併用することによりこれらの殺細胞効果が増強されることなどが明らかにされて来た. 本稿では文献をもとに, 温熱療法の基礎と臨床を概説し, 合わせて我々の行っている全身温熱療法の概略についても述べた.
  • エルヴィン ニーデラ
    原稿種別: 言語学
    1984 年6 巻3 号 p. 317-328
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    いかなる言語にも, 内容のないきまり文句, 流行語, また, 局外者には特に理解しがたい用語法がある. 慣用語法は文章論上の規則には従うが, 造語論から観れば, 把握されえないので, 語源学者や語義学者ですら, この語法を充分にかつ適切に使いこなすのはなかなか因難である. 本論文では, 適当な例を挙げて, 慣用語法的表現が言語学的に体系づけられえない原因が考察され, 特に2つの面から-意味論的体系と像の大概論による分類-ある程度の体系化の可能性が論述される. 研究対象は, 今回はドイツ語に限定されたが, 次回はドイツ語慣用語法と他のヨーロッパ諸語のそれとを比較し, 共通性と特殊性に依って, その成立理由を考察したい.
  • 伊藤 幸郎
    原稿種別: 人間学
    1984 年6 巻3 号 p. 329-344
    発行日: 1984/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    本学の建学の使命の第1は「哲学する医師」を養成することであり, 医学概論(総合人間学)の教育目標もこれに一致する. 本邦における医学概論の創始者, 澤瀉久敬博士は医学概論とは「医学の哲学」であると定義している. 医学の哲学は医師, 研究者をはじめあらゆる職種の医療従事者のための哲学でなければならない. したがって, その哲学は医療の生の現場の体験から得られた具体的内容で支えられるべきである. 本稿は昭和57年後学期に医学部5年生に対して行われた「人間と医学」というテーマの講義シリーズの草稿を骨子にした, 「産業医科大学講義・医学概論・1982」の82-99頁の内容にもとづいている. 本稿において目ざしたことは, 医学の歴史という鏡に映し出された形をとって, 各時代の人間, 先哲らの哲学とともに, 著者自身の私見が読者に伝達されることである. Willam Hazlittがいうように, 古さの故に先人を笑う者は自らも物笑いの種にされる.
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