抄録
いかなる言語にも, 内容のないきまり文句, 流行語, また, 局外者には特に理解しがたい用語法がある. 慣用語法は文章論上の規則には従うが, 造語論から観れば, 把握されえないので, 語源学者や語義学者ですら, この語法を充分にかつ適切に使いこなすのはなかなか因難である. 本論文では, 適当な例を挙げて, 慣用語法的表現が言語学的に体系づけられえない原因が考察され, 特に2つの面から-意味論的体系と像の大概論による分類-ある程度の体系化の可能性が論述される. 研究対象は, 今回はドイツ語に限定されたが, 次回はドイツ語慣用語法と他のヨーロッパ諸語のそれとを比較し, 共通性と特殊性に依って, その成立理由を考察したい.