抄録
本研究は日中建築技術交流と農村建設の現状把握のために中国建築学会の協力を得て浙江省寧紹平原の農村(1郷・4村・1農場)をえらび,1984年9月4日~15日におこなった調査をもとにすすめられた。
研究の視点を①各地域における農村住宅型の発展過程,②地域施設整備の課題,③村鎮建設計画制度の展開状況を明らかにすることにおき,これまでの調査研究①との比較において問題点の明確化をはかった。
1.農村集落計画制度について
中国政府は全国の農村建設に対して,基本的事項を指導し,原則的な法規を定め,技術交流をさかんにする役割を果している。
2.集落土地利用計画について
農業生産の発展と農村における工・副業の発展に対応して積極的に土地利用の転換をはかり,集落改造をおこなっている。集落の土地利用計画では,建設用地を設定しスプロール化をふせいでいる。また,集落改造では,伝統的景観や水郷的景観の保全につとめている。
3.農村住宅と住まい方について
住宅の全体的な機能構成が不明瞭なまま,住宅の規模拡大がおこなわれている。次に住宅空間の改善に応じた住み手の「住みこなし」の醸成が必要である。また,設備改善のおくれ,宅地規模とその有効利用の問題などが指摘される。
4.農村地域施設について
施設整備の優先順位は必ずしも経済力の大小とは関係しない。医療施設の利用では,都市に近い地域の農民がより質の高い医療を選択するようになり,施設立地の段階性の崩れがみられる。施設の整備水準のおくれ,合体施工の施設が多いことが指摘できる。今回の調査では調査の不備,裏付け資料の不足,分析の不十分な点もあり,次年度での補完調査に待つところが大きい。