住宅建築研究所報
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民家集落の建築類型学的研究
“中国黄河流域の窰洞式民家考察その3”
青木 志郎宮野 秋彦茶谷 正洋江崎 陽一郎稲葉 一八楠本 侑司八木 幸二中沢 敏彰水谷 章夫八代 克彦山畑 信博井上 知幸
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1986 年 12 巻 p. 407-419

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抄録
 本研究は,その1(No.8118),その2(No.8218)に続き,中華人民共和国黄河流域の伝統的住居形式である窰洞集落を対象に,実測調査をもとに,その実態と居住様式を明らかにすることを目的とする。これまでの研究経過を総括すると,第1年度(1981年7月‐8月)は窰洞住居を,第2年度(1982年12月‐1983年1月)は窰洞集落を対象に,その実態と居住様式を明らかにしてきた。地域は黄河中流の3省(甘粛省・陝西省・河南省)を中心としている。窰洞の基本形式は,地中に穴を穿つ建設方式であるため,自然災害に対して大規模な改修を行うことができず,放棄埋め戻し,崖面の後退など新しい場所への作り替えが行なわれることになる。そのため,年代を経過した窰洞の変容実態を求めにくい。また,生活の近代化による地上家屋への住み替えも増す傾向にあり,これらに対して通時的視点を有する調査研究が課題となる。また,窰洞住居は冬暖かく,夏涼しい省エネルギー住居であることが確認される反面,採光,換気,除湿等の環境面での問題をかかえており,その研究改良のため中国側から特に共同研究の要望が寄せられている。以上から,第3年度に当たり,次の点に主限を置き調査を行なった。 1)前回までに訪れた集落を中心に,その変化の様子を記録するとともに,通時的視点に立った窰洞住居における居住様式の把握 2)窰洞単体内外における温湿度,照度,残響時間等の居住環境調査及び土質調査 3)主要窰洞分布地域のひとつである山西省における実測調査 4)ビデオ撮影及び各集落俯瞰写真の撮影による調査 本報告は,1984年4月-5月に行った日本側延べ16名による調査のうち,特に大きな成果の得られた上記1),2)についての調査を根幹とするが,その後行われた環境調査(1985年1月‐2月)及び1985年度春期の調査成果も一部含まれている。
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© 1986 一般財団法人 住総研
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