住宅建築研究所報
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東支那海同緯度圏における民家・集落の空間構成に関する比較研究(1)
山田 水城呉 譲治古川 修文出口 清孝大塚 信哉陳 長庚洪 偉祐
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1987 年 13 巻 p. 363-372

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抄録
 東支那海の北緯25度周辺に位置する沖縄と中国とは,福州経由で14世紀中頃から相互の交流が盛んであった。当時の琉球は薩摩の支配下にあり,日本の文化圏にありながら,中国文化の影響も強く受けていたと考えられる。本研究はこの背景のもとに築かれてきた沖縄の民家・集落の空間構成を,同緯度圏の西側台湾および中国福建省の民家・集落を調査することによって,両者の類似性,相違性,地域特性などを比較研究し,沖縄の創り出した独自性を見つけ出すことを目的としている。北緯25度周辺の沖縄および台湾の気象条件は,年間を通じて高温多湿,夏期は真上から強烈な日射を受け,冬期は季節風が強く,かつ日照時間が短い。そして共に台風常襲地域である。したがって,両者に共通して必要なことは夏期の炎暑,夏から秋にかけての台風,及び強風下にある冬の寒さへの防備である。今日までの6島嶼17家屋の調査によれば沖縄民家の室内温熱環境は外気追従型であり,台湾のそれは閉鎖断熱型の特徴を持っていることが判断される。これは換言すると沖縄は夏期を,台湾は冬期を優先した空間構成と言える。夏においては,沖縄・台湾ともほぼ同じ素焼きの赤瓦を厚く葺いた断熱性の高い屋根で強い日射しを遮蔽している。しかし壁体については材料,構法とも全く相反しており,沖縄の木造軸組に対し,台湾は碑,土を用いた組積造である。従って両者の開口部比や壁体の熱貫流抵抗に大きな差があり,これが前述の室内温熱環境の違いを作り出している。しかし軽量な軸組の沖縄の民家は,屋根の重量のみでは台風時の建物の浮き上がりを防ぐことができない。風を減衰させるため,敷地外周に防風効果の高い福木の樹列を配したのである。即ち,沖縄の民家における重厚な赤瓦と福木の防風林は,沖縄の気象条件に適合する居住空間を成立させるためどうしても必要だったのである。西側同緯度圏には見られない沖縄独自の空間構成である。
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© 1987 一般財団法人 住総研
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