住宅総合研究財団研究年報
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有料老人ホームの建築計画に関する研究
施設類型についての検討
小滝 一正林 玉子児玉 桂子萩田 秋雄大原 一興
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1989 年 15 巻 p. 207-217

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抄録

 有料老人ホームは,各種のサービスを伴う老人向け高級集合住宅として捉えられるが,その計画は現状においては経営上の条件が優先される傾向にある。建築計画面での蓄積は極めて少なくてさまざまな問題を残しており,建築計画的研究が求められている。また,一般に有料老人ホームは,入居費用が高額であるという問題はあるものの,施設・設備の質の高さ,各種のサービスの提供,居住者の生活意識の高さなどの点で,今後の高齢者住宅一般のありかたを検討するうえでのひとつのモデルになりえよう。そこで,本研究では,有料老人ホームを研究の対象に取り上げ,計画の指針を得るための基礎的研究段階として,まずは施設類型を探ることを目的としたい。既存統計資料の分析に若干の実地調査を加えて,以下のような8つの施設類型を見出した。ⓐ病院を伴設し,かつ介護対処を重視する型,ⓑ介護は施設内でするが,費用を別途徴収する型,ⓒ大規模で施設内容が充実し,介護対処や医療対処体制をもつ型,ⓓ病院伴設であるが,介護対処よりも施設設備を充実して生活を重視する型,ⓔ医療・介護対処よりも,入居者の自律的生活に重点を置く型,ⓕ古く小規模で入居費用が安いが,施設設備やサービスが万全でない型,ⓖ施設設備は中程度で,終身保障方式の施設型,ⓗ介護専用の型。これらのうち,ⓐ病院伴設介護対処型,ⓒ大規模総合型,ⓔ生活重視型,ⓗ介護専用型が,明快な特徴をもつ施設類型といえよう。また類型軸をまとめると,①施設規模の大小,②運営方針(生活重視の度合),③病院伴設の有無,④介護専用か否かと,大きく4つの観点がある。これらはいずれも建築計画において計画目標の設定を左右する要因であり,計画指針を検討する上で重要である。当初に予定した居住者の住まいかたと住意識の実態把握には至らず,今後の課題とした。

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© 1989 一般財団法人 住総研
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