住宅総合研究財団研究年報
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現代型住居の解釈
(続)体験記述にもとづく日本住居現代史と住居論
小柳津 醇一鈴木 成文畑 聰一初見 学在塚 礼子友田 博通長沢 悟曽根 洋子笠嶋 泰戸部 栄一小林 秀樹菊地 成朋黒野 弘靖高岡 えり子
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1991 年 17 巻 p. 105-114

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抄録
 本研究は,現代日本住居の意味の解釈と評価を試みるもので,1987年度研究「型の崩壊と生成」の継続研究である。本年度は対象を大都市だけでなく地方都市や農村部にも広げ,現代の日本住居を考える上で不可欠と思われる「型」を描出した。具体的には,大都市の新築建売住宅に多く見られる「都市LDK型」,住宅の近代化を推進してきた「集合住宅型」,地域の伝統を残しながらも今や全国の農村に普及しつつある「地方続き間型」の3つの型である。本研究では,これまでに蓄積した体験記述に加え農村部での見学調査事例も考察の素材とした。本論ではそれぞれの型の形成変容過程とその特質を整埋し,それらを通して見られる現代日本住居の特徴的側面として,(1)空間の開放性・連続性とその閉鎖化・個別化(2)洋室と和室の併存(3)個室化と居間の性格(4)住宅の対社会性に着目して考察した。(1)では,日本住居における開放性・連続性の伝統,洋風化に伴う間仕切壁の導入,続き間座敷の存続と和室洋室の連続,について論考。(2)では,洋風化・イス坐化の流れ,根強いユカ坐生活の存続,洋風居間におけるソファの定型化とユカ坐,LDK型住宅における和室や座敷の存続,について論考。(3)では,空間の機能分化および公私分化の理念の発生,私室確保の意味するもの,居間の形成とその意味,オモテの存続あるいは復活,「オモテ・ウチ」概念と「公・私」概念,について論考。(4)では,接客空間,内と外の関係,戸外に対する閉鎖牲,について論考した。最後に現代日本住居の型の流れを,変容を促す力と持続の力の括抗関係の中で時代ごとに整理し,住居変容のダイナミズムを明らかにした。今後の日本住居の展開は,文化の力の尊重と住み手の主体的な力にかかるとともに,情報の力をいかに効果的に利用するかによるところが大きい。
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© 1991 一般財団法人 住総研
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