住宅総合研究財団研究年報
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東京市社会局調査の研究
佐藤 健二井腰 圭介内田 雄造大串 夏身大月 隆寛大本 圭野小川 徹太郎重信 幸彦竹中 英紀中川 清吉見 俊哉
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1992 年 18 巻 p. 289-298

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抄録
 本研究の目的は,東京市社会局が行なった調査実践の全体像を明らかにすることにある。東京市社会局は,大正8(1919)年に東京市に設置された組織で,都市社会問題に関するさまざまな政策や調査を行なった。これらの調査は,近代日本における社会調査の歴史にとって重要であり,住宅問題をはじめ職業・生活の諸側面から都市下層の実態にせまるこれらの記録が,いかなる問題意識と方法論のもとで生み出されたのかという問いかけがもつ意味は大きい。しかしながら,これまで東京市社会局が行なってきた調査については,わずかに刊行された報告書のリスト作成などが試みられているにすぎない。しかし刊行にまでいたらなかった調査実践も多く,さらには単なるタイトルと刊記条項を記したにすぎない文献リスト形式の資料集成では,調査実践の特質にせまることはできない。それゆえ,まず本研究においては,共通の資料基盤をつくることを重要な第一歩と考え,別なアプローチを選択した。さまざまな図書館に,偶然残されている報告書からだけではなく,年報や季報・時報といった活動報告のなかの調査関連の記事を組織的に集成し,また同時代に東京市の社会局調査掛員によって編纂された調査リストと対照させながら,調査実践のすべてを洗い出した。それらによって,社会局が活動をした1920年から1938年までのあいだの調査実践として,最終的には343タイトルの調査が浮かびあがってきた。これらに関するさまざまな記載情報を整理し,編集して,基礎資料集成を作成した。またさらに,いくつかの索引を工夫し,今後の研究の基礎となるように試みたところに本研究の意義がある。
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© 1992 一般財団法人 住総研
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