住宅総合研究財団研究年報
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住宅空間における昼光環境の動的変動に関する研究
中村 洋古賀 靖子松澤 朋子慎 仁重
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1994 年 20 巻 p. 317-326

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抄録
 昼間の住宅空間の照明は,本来,昼光に依存すべきである。しかし,今日の住宅では,室の機能が分化し,また,生活も多様化している。したがって,昼光照明だけで満足できる状態を確保できない。人工照明を併用して,目的に適った快適な光環境を確保している。本研究は,今日の住宅空間が,昼間でも,昼光と人工光を併用する照明を必要としている現況を前提とし,時刻ごとの,終日の,季節ごとの,年間を通しての,あるいは,晴れや曇り,その中間の状態での天気状態ごとの,また,人工照明の点灯や消灯,洋室や和室等の造作や仕上げの相違,家具の配置,さらに障子やカーテンなど種々の要因に関し,その時々の室内の光環境の変動を動的にとらえ,適切な知見を得ることを目的とする。さらに,単に住宅の昼光と人工照明の計画ばかりでなく,その総合的な計画や設計,建設に有用な指針を確立し,この発展に寄与することを思している。以上の目的のために,本研究では実際の住宅空間で実験的調査を行ない,現在までに,かなリ膨大な資料を取得している。これらの資料は,目下,解析と検討の途次にあるが,現在までに,主として,「室内の水平面照度と空間照度(以下,両者を合わせ,単に照度という)の変動」,「空間内の位置が照度の終日変動に与える影響」,「空間内の高さが照度の終日変動に与える高さの影響」,「ベクトル照度の高度と方位,および,ベクトル/スカラー比の終日変動」,「室内仕上面の反射率の影響」,「天空と天候状態の影響」,「昼光照明時と昼光人工光併用時における人工光の影響」などに関し,有用と思われる数多くの新しい知見を得ている。これらの知見を真に有用な住宅の計画や設計,建設の指導指針として,昇華するには,さらに,膨大な実験や実測,検討を継続し,多大の努力を重ねなけれぱならない。研究代表者をはじめ委員全員は,十分その覚悟でいる。
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© 1994 一般財団法人 住総研
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