住宅総合研究財団研究年報
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夏季冷房時における断熱気密壁体の内部結露に関する研究
渡辺 俊行龍 有二須貝 高尾崎 明仁赤司 泰義
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1994 年 20 巻 p. 327-338

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抄録

 断熱気密住宅は冬季寒冷地域に限らず夏季蒸暑地域においても普及の兆しがみられるが,梅雨季の開放的な住まい方を経た断熱気密住宅は,躯体や断熱材の含水率が上昇し,夏季冷房時の内部結露や腐朽による躯体材料の劣化を起こす恐れがある。本研究は,季間蒸暑地域における住宅の断熱気密断湿指針と夏季冷房時の壁体内部結露防止策を提案することを目的として,壁体内部の熱・水分移動現象を実験的・解析的に明らかにするとともに,断熱壁体の最適構成法について検討するものである。まず,水分ポテンシャル(熱力学的状態量)を用いた熱・水分移動方程式を提案し,グラスウールの透湿実験との照合により数式モデルの妥当性を検証した。次に,夏季冷房時を想定した屋外暴露実験(断熱材としてグラスウールを使用)により,在来壁体では内部結露が生じること,貫流湿流を内部防湿層で遮断する内部防湿層付き通気壁体,および壁体内部の湿気を室内側通湿層から排湿する通気通湿壁体では結露が発生しないことを明らかにした。また,高断熱高気密住宅(佐賀県基山町)の内部防湿層付き通気壁体および通気通湿壁体において,夏季冷房時の内装材外側相対湿度はそれぞれ80%程度,67~75%であり,いずれの壁体も内部結露が生じないことを確認した。さらに,供試壁体の両側空気温湿度と壁体外表面加熱量(日射受熱量に相当)を制御した実験により,壁体内の初期相対湿度が90%と高く,壁体外表面が加熱された条件において,上記の屋外暴露実験結果が再現されることを確認した。最後に,熱・水分移動方程式を用いた数値計算により,各種壁体の湿気性状に関する地域特性(大阪,福岡,鹿児島,那覇)と方位特性を検討した。在来構法の西壁では上記4地域で内部結露が発生する。通気通湿壁体の結露防止効果は大きく,福岡の場合は壁体方位にかかわらず内装材外側相対湿度を90%以下に保つことができる。

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© 1994 一般財団法人 住総研
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