中国では建国以来,住宅供給は福祉事業として位置づけられ,労働者に現物で住宅を与え,低家賃で貸してきた。このシステムは低家賃のため住宅修繕費用を乏しくし,その結果,都市集合住宅の維持保全は劣悪な状態になった。そのような状況から住宅管理システムの改善が行なわれてきている。この研究は中国の集合住宅管理システムの新しいあり方を追究しようとするものである。上海,北京,沈陽などの諸都市で房産管理局などのヒヤリング調査を行ない,上海,北京の両市では5団地において共同住宅の維持保全状態の現地調査を行なって,日本の住宅との比較を行なった。その結果,第1に,中国の都市集合住宅管理体制は,大きく物的管理を扱う部分と団地の生活管理を扱う部分とに分かれており,後者は居民委員会など住民組織のかかわりが前者より多く,住民の参加が図られていること,第2に,前者の管理組織は4段階の構成になっていて,市房地産管理局-区房地産管理処-房地産管理所-管養段(ステーション)があり,それらには管理の専門職が配置されていること,第3に,中国の住宅管理の問題が低家賃と低い維待管理費用,修緒費用の不足に起因していることは確かで,その結果として“安かろう,悪かろう”の管理状態になっている。しかしながらメンテナンスの状態などを実地調査からみると,問題は費用だけでなく,建設時の施工の問題,補修施工技術・技術者の問題,材料選択上の問題などがかかわっており,多面的な要因があること,第4に,“安かろう,悪かろう”の管理が,住戸の自己改造を多く生み出し,かつ住民のなかに管理へのあきらめ意識を広げていること,などが明らかになった。管理システム改善の方向は,第1に,家賃の上昇によって管理の費用を増加させるとともに,住宅の補修をはじめ管理を規定どうり,規則ただしく実施するようにすること,第2に,住民の管理への参加をはかり,住民が共同で生活空間を良くしていくことに積極的になるようにすること,などが必要である。