2002 年 28 巻 p. 107-118
今和次郎が参加した1934~41年(昭和9~16)の農林省積雪地方農村経済調査所による積雪地方農家家屋調査と(財)同潤会による東北地方農山漁村住宅改善調査は,戦前における農村の生活・住宅改善を目的とした画期的な調査研究であった。そのような研究がなぜ,どのような組織で行われたのか。大正期から農村研究に打ち込み,数々の業績を残してきた今がこの調査において果たした役割と成果について検証した。今の85年に及ぶ生涯は,日本の近代化に始まり二度に亘る世界大戦を経た激動の時代の中で,常に人間と人間の生活のあり方に焦点を当てながら実践をもってすすめたものだった。この調査の成果は戦後の農村における生活改善運動の基礎となったといえる。