2007 年 33 巻 p. 195-206
本研究では,まず,第二次世界大戦の終戦前の約30年間に亘って日本の統治下にあった旧南洋群島で,当時,日本人が建設した官舎と社宅の実態を,日本国内と米国で所蔵されている図面類と現地調査の結果を用いて,明らかにしようとした。次いで,同時代の旧植民地諸地域を含む日本国内の官舎や社宅に関する先行研究を網羅して比較することによって,南洋群島における官舎や社宅の特質を考察し,日本の住宅供給の歴史的な経緯の中での位置付けを行おうとした。その結果,熱帯性の気候に対処するための工夫を中心に,他の旧植民地諸地域を含む日本国内の官舎や社宅では見られない特質を指摘することができた。