2007 年 33 巻 p. 323-334
要介護高齢者が在宅で暮らし続けるためには住宅改修が不可欠である。ところが日本の介護保険ではそれが不十分であり,施設入居を余儀なくされている高齢者が少なくない。本研究では,要介護高齢者が必要とする住宅改修を,金額の上限を設定せずに介護保険で実施した場合,公的な財政負担がどの程度変化するかを明らかにした。財政負担の変化をシミュレーションした結果,住宅改修を拡充することで公費負担は年間1098億円増えるが,施設入居者が減るため公費負担は1272億円減少し,トータルでは170億円程度公費負担が軽減されるとなった。住宅改修を公費で実施することは,要介護高齢者,国家財政の双方にとって望ましいといえる。