2008 年 34 巻 p. 195-206
台湾漢人の間では,住宅内の房間(居室)の一部ないし全部に床を張り,その上に雑魚寝する生活が広く行われてきた。この揚床をホーロー語で「総舗chóng-pho」と呼ぶ。地床に眠床(寝台)を置くのが常識とされる漢人住居になぜこのような特異な変容が生じたのか。本研究では植民地期における台湾家屋・日本家屋の交渉関係をこの「床」の存在に注目して検討する。彰化縣田中(市街地),台南市湾裡(村落)での集中的な調査と,台湾各地での事例収集の成果を踏まえ,総舗の現存状況や類型を把握した上で,(1)起居様式,(2)」家族社会,(3)文化意識,(4)材料と技術,の各視点に沿って現段階での知見を示し,総舗を歴史的に位置づけるための仮説と課題を提出する。