2009 年 35 巻 p. 155-166
中国広州市の旧市街には,1920~30年代に建設された騎楼建築が街路に沿って並び独特の景観を創り出している。本研究は,この騎楼およびそれと一体的に密集市街地を構成する一般都市住宅における居住実態と居住者意識,さらには建て替え・修復の実態を明らかにした。騎楼および騎楼街路の歴史的価値が認識され,従来のスラムクリアランス型ではない騎楼街区の保全的再生に向けては,市政府もさまざまな取り組みや検討を行っているが,地域コミュニティを守りつつ劣悪な居住水準を向上させていくためにはいくつかの深刻な課題が内在している。財政的な支援にもとづく小規模な単位での建て替え,修復を積み重ねることが提案される。