2009 年 35 巻 p. 215-226
本研究は,史資料の散逸が激しく,また語り手である入所者の高齢化が進むハンセン病療養所において,「隔離施設」として発展した施設構成の変遷を明らかにした上で,居住の自由を奪われた「隔離施設」での居住の実態を寮舎及び患者住宅のプラン変遷から解明した。また,入所者による居住環境改善過程について詳細な分析を行い,人権が激しく毀損され,自己のアイデンティティを問い直される環境に長期におかれる中で,自律を獲得し,自分らしい生き方を回復していく過程/手段のひとつとして,居住環境の改善が行われてきた事実を明らかにした。