2009 年 35 巻 p. 297-308
我が国の建築技術は世界でも最高レベルにあり,特に,木造建築の加工に関しては特筆すべきものがあるとされる。しかしながら,従来,そうした熟練技能は,技能者間の口伝や徒弟による経験により体得するものだとされ,研究の対象とはされてこなかった。技能は,過去のものではなく,今でも改良が重ねられ続けている。そこには,現代,そして未来の技術開発に寄与しうる英知が結集されている可能性がある。本研究は,熟達した大工の技能を作業研究および構造実験により詳細に評価しようというものであるが,技能承継に資する資料を作成といった意味だけでなく,持続可能な木造住宅の生産システム構築に寄与することを目的としたものである。