2009 年 35 巻 p. 321-332
本研究では,1985年に発生したメキシコ大地震の復興政策,およびNGO・民衆セクターによる住宅再建の取り組みを対象とした調査を行い,震災復興政策の社会的影響として,メキシコシティ都心部のインナーシティをもともとの住民を外部に追い出すことなく,かつ安価な条件で住宅供給を行うことで解消し,一方で被災者運動の成功が復興政策に含まれなかった住宅問題の取り組みに大きな推進力を与え,震災以降政治変革を迫る社会運動として発展していったこと,また自助建設活動の意義として,伝統的な共同体生活に不可欠な居住空間を継承した住宅の再建および包括的なコミュニティデベロップメントを通じた地域社会の再生を達成したことを明らかにした。