2011 年 37 巻 p. 95-106
本研究では,1964年東京五輪と2008年北京五輪を対象に,開催決定から閉幕後までの期間を「五輪開催期」と定義した上で,この期間における都市計画,不動産市場の動向,さらに立ち退き問題について,五輪との関連で多面的に捉えようと試みた。文献研究および聞き取り調査の結果,都市計画では既存の道路建設計画の遂行という側面が強い東京に対し,北京の場合は会場計画の配置が既存のマスタープランとは必ずしも合致しないことなどが把握された。また,北京における持家化の速度が激しいこと,立ち退き問題では両都市において意外と類似した側面は多いが,北京においては住宅制度改革の進行と関連して問題構造がより複雑であることなどが確認された。