抄録
本研究は,日本住宅独自の意匠であるトコノマについて,仕様と用法の関係を上層住宅・庶民住宅の双方から検討するものである。内裏・江戸城では,公的な場では板床,私的な場では畳床が使い分けられ,内裏では宝永期以降畳床の使用が表向に広がる一方,江戸城では大広間・白書院上段の間等で幕末まで板床を堅持した。板床・畳床の場の性格による使い分けは室町後期の会所等ですでに確認でき,畳床の採用の拡大は,表向で「書院」を重用する殿舎構成の変化に伴う可能性が高い。一方庶民住宅では,地域ごとにトコノマの設置や仕様選択の傾向が相違し,仕様の使い分けには先祖祭祀と接客・親族儀礼の場の対比が重視された。