抄録
本研究では旧東宮御所の室内意匠と家具調度品について宮内庁所蔵資料を中心に分析し,天井絵画と家具は海外の室内装飾家が,壁装飾は国内の美術家や織物業者が製作したことを明らかにした。施工は国内の業者や職人が日本の伝統的な技法も取り入れながら本格的な西洋古典様式の室内を完成させたことを明らかにした。また,東宮御所として使用されなかった本建築は戦前期に度々,迎賓館として使用され,その都度,室内の改修や家具調度品の修理,製作が行われたことを明らかにした。造営時に輸入品に頼っていた家具は改修時には国内製で対応できるまでになったことも分かり、技術の発展が見られた。また,本建築完成後の利用状況について考察した。