抄録
全国の重文民家の約6割は個人所有であり,維持管理の負担や公開などの点で難しい課題を抱えている。本研究では,1)重文民家の所有者と市町村担当者へのアンケ-ト調査,2)サポ-トモデル事例の調査,3)重文民家の支援者を広げる実践活動を行い,個人所有重文民家を地域で支える可能性を検討した。その結果,高齢の所有者が住みつつ維持管理を担う厳しい実態と,外部支援者による活動は重文民家の居住のレベルや建物の空間条件が関与することを明らかにした。個人所有重文民家を地域で支えていくには,プライバシーや防犯に配慮しつつ重文民家を地域に開き,重文民家の課題や居住文化の価値を地域住民に知ってもらう体験や学習の場をつくることが重要と考えられた。