2017 年 43 巻 p. 79-90
山間にある長野県阿智村清内路集落では,集落中心部には耕地が確保できないため,日当たりの良い斜面の高地に耕作地を求め,そこに夏の間一定期間過ごす「出作り」をしてきた。この風習の現代的な継承のために,経験者による「語り 部」の可能性が考えられる。現在では本来の出作りも語り部もほとんど消滅した。かつての生活の想起,出作り民家の実 態と生活の変化と経緯などを総体的に記録し,この地域遺産のリストを作成した。多くは変貌し伝統的な出作りは衰退し ていたが,本宅と山の家との二拠点の存在を活かし現代生活のスタイルを作り上げている家も見られた。また,その地域 文化の伝承を進めるエコミュージアムの実態についても考察した。