本研究では,職住近接が現在に至るまで行われてきた栃木県宇都宮市大谷エリアにおいて,この地域特有の採石産業と結びついた人々の暮らしと職住近接空間の特徴を調査した。居住地と観光・産業の場,両面の特徴を持ち,このような姿を残した発展が望まれる大谷エリアにおける,流動的な働き方と暮らし方を検討することで,大谷エリアにおける今後の職住シェア空間として,地域内の移動手段を兼ねた移動式のワークスペース兼寝室を提案した。プロトタイプを制作し,試験運用したところ,大谷エリアならではの雄大な風景のなかを自由に移動でき,屋外や半屋外で比較的快適に過ごせる空間となったことが確認できた。