獣医麻酔外科学雑誌
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原著
犬における移植腎早期急性拒絶反応抑制を目的とした 3剤併用免疫抑制療法の適用
片山 泰章深井 和紘五十嵐 宏之谷 健二百田 豊神志那 弘明佐藤 かつ江高橋 公正多川 政弘
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2010 年 41 巻 1 号 p. 9-16

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抄録

犬の腎移植において従来から用いられているシクロスポリン、アザチオプリンおよびプレドニゾロンによる免疫抑制法は、肝毒性や骨髄抑制等が副作用として問題となる。本研究ではこれらの問題点を改善するために、6頭の腎移植犬において、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェティルおよびプレドニゾロンによる3剤併用免疫抑制療法の早期急性拒絶反応抑制効果およびその安全性について検討した。6頭中5頭が90日の試験期間を通して生存したが、残り1頭は術後9日目に原因不明のまま死亡した。Banff’07の移植腎病理診断基準では、生存した5頭中3頭には拒絶反応を示す所見は認められなかった。残りの2頭は急性拒絶反応を呈したが、同時に尿路感染の併発も認められた。生存した全頭において十二指腸粘膜下織への軽度-中等度の炎症細胞浸潤および腸分泌腺管腔の拡張が認められたが、それらに関連する臨床症状は認められなかった。本研究で用いた3剤併用免疫抑制療法は、犬の腎移植における早期急性拒絶反応抑制に有効で、かつ重篤な副作用も認められないことより、本プロトコールは従来の免疫抑制プロトコールの代替療法として有効である可能性が示唆された。

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© 2010 獣医麻酔外科学会
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