2011 年 42 巻 1 号 p. 1-5
2歳齢、雄のアメリカン・コッカー・スパニエルが慢性鼻出血を主訴に来院した。X線CT検査で真菌感染症が強く疑われたが、生検・培養検査・血清学検査で真菌感染を証明できなかったため、左鼻腔・前頭洞切開術を実施し鼻腔粘膜を切除した。切除した粘膜組織は病理組織検査により、真菌性肉芽腫と診断されたため、抗真菌剤の投与を行った。その結果、本症例は3年4ヵ月以上再発を認めずに生存している。以上より、X線CT検査で真菌感染症の特徴的な所見が得られた場合は、検査で感染が証明されなくても、診断・治療のために適切な鼻腔や前頭洞切開による鼻粘膜の生検が必要であると考えられた。