獣医疫学雑誌
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ストール飼育雌豚における四肢の肢勢スコアと生存時間,背脂肪厚及び行動との関連性
金子 麻衣佐々木 羊介高井 康孝纐纈 雄三
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2009 年 13 巻 2 号 p. 114-120

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抄録
跛行や脚弱といった四肢の問題は,動物福祉の問題に関係していると考えられる。海外では,農場導入時の未経産豚における四肢の肢勢スコアが発表されているが,これはストール飼育された雌豚において,四肢に問題がある雌豚を発見することに役立つかもしれない。本研究は,生産農場において,ストール飼育された雌豚の四肢の肢勢を観察すること,肢勢スコアと生存時間,背脂肪厚及び行動との関連性を調査することを目的とした。繁殖雌豚500頭一貫経営農場に2年間で6回訪問し,雌豚の四肢の肢勢スコアを記録した。肢勢スコアは,OKとPOORに分類した。前肢において,肘が内側に曲がっているもの,後肢において,尻・後膝・飛節が直線上に位置にあり直肢している,または飛節が鎌状に曲がっているものをPOOR, POOR以外の肢勢をOKとした。また,少なくとも1本の肢の肢勢スコアがPOORであった雌豚をPOORグループ,その他の雌豚をOKグループに分類した。四肢の肢勢スコアと生存時間の関連性には,生存時間分析を用い,その他の分析には混合効果モデルを用いた。709頭における1,560観察記録の内,肢勢スコアがPOORであった記録は6.4%(1460記録),OKであった記録は93.6%(100記録)であった。また,四肢の肢勢を複数回観察された495頭のうち,86.5%(428頭)は産次を経ても肢勢スコアが変化しなかった。0,1,2,5,6産次の雌豚は3産次と4産次の雌豚よりも肢勢スコアがPOORであった雌豚の割合が低くなった(P<0.05)。生存確率に肢勢スコアによる差は見られなかった。また,淘汰リスクに肢勢スコアによる差はなかった。背脂肪厚,行動割合と肢勢スコアに関連性はなかった。本研究において,ストール飼育された雌豚における四肢の肢勢スコアは,生存時間,背脂肪厚及び行動と関連がないことを示唆した。
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© 2009 獣医疫学会
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