抄録
1999年4月から2000年5月までに, 千葉および茨城県下に旅鳥や夏鳥として飛来したシギ, チドリ, アジサシなどの水鳥16種343羽におけるVibrio属菌の保有状況を検討し, 以下の成績を得た。
1) 供試した水鳥343羽中, Vibrio属菌は103羽 (30.0%) から分離され, このうちV.choleraeは54羽 (15.7%) , V.parahaemolyticusは29羽 (8.5%) から分離された。
2) 分離されたV.choleraeはいずれも血清型non-O1で, コレラ毒素を産生し, コレラの主たる原因菌として知られる血清型O1は分離されなかった。分離菌株については, コレラ毒素遺伝子 (ctx) , NAG-ST遺伝子 (stn) , およびエルトール溶血毒遺伝子 (hly A) の有無をPCR法で検索したが, その結果, ctxおよびstnはいずれも陰性であったが, hly Aは分離株の51.8%が陽性で, 供試した水鳥の8.8%から分離された。また, 分離されたV.parahaemolyticusはいずれも腸炎ビブリオの病原因子である耐熱性溶血毒 (TDH) 陰性であった。
3) 以上の成績から, 我が国に飛来する水鳥は, 比較的高率にV.choleyaeおよびV.parahaemolyticusを保菌するが, V.choleraeの一部の菌株が環境分離株からもしばしば検出されるhly A遺伝子を保有していた以外は, いずれも非病原性であったことから, これら水鳥は病原性V.choleraeおよびV.parahaemolyticusのレゼルボアではなく, その保菌は水鳥の生息する環境におけるVibrio属菌の分布を反映していると思われた。