2009 年 62 巻 10 号 p. 785-787
症例はサラブレッド種競走用馬,雄,3歳.左陰囊の腫脹と慢性の疝痛様症状を呈したため,両側の精巣および精巣上体が摘出された.左精巣上体尾部には乳白色の膿様物が貯留していたが,病原性を有する細菌は分離されなかった.病理組織学的に,左精巣上体に変性ないし壊死した精巣上体管由来の不整な限局病巣が多数存在し,病巣周囲には漏出した精子を貪食したマクロファージや類上皮細胞が多数観察されたことから精子肉芽腫と診断された.また両側精巣では精祖細胞や精娘細胞は変性し,精細管内へ脱落し,精子形成不全の状態であった.以上の結果より,本症例は何らかの感染による精巣上体炎に端を発して形成された精子肉芽腫により抗精子抗体が産生され,二次的に精子形成障害を惹起した可能性が示唆された.